「明日から新しいメンバーが入るから」

赤木博士に言われて、ああ、と思う。以前話に聞いた「人間の」パイロット、実用段階になったらしい。まあそうでなければ困る。どれだけ余計な実験に付き合わされたことか。それでなくても最近使徒の攻勢は頻回でストレスが溜まっていたのに、新しいシステムのための実験とか言われて遅くまで付き合わされて、正直僕は閉口した。レイは特別何も口にはしなかったが、疲れていたのは見ていればわかった。僕以外の誰もそんなこと気にもしてくれなかったみたいだけど。
了解してそれ以上何も言わない僕らに葛城さんがため息をつきながら言った。
「新しい子たちがどんな子なのかぁとか、気になんないの? あなた達らしいって言えばらしいけど」
「別に。会えばわかりますから」
そっけなく言う。別に答えなくてもいいと思う。実際レイはほとんどこういったことに反応しない。けど葛城さんは僕らの無反応を気に入らないらしく、うるさく絡んでくるので仕方なく最低限は答えを返すようになってしまった。
「一応ちゃんと紹介するから、明日は先にブリーフィングルームに来て頂戴」
赤木博士に言われてうなずいた。

翌日ブリーフィングルームに行くとレイと男の子が一人いた。
「やあ、初めまして。君が新しいパイロットかな」
精一杯愛想良くそう聞くと、その子は緊張した顔で立ち上がり「碇シンジです。よろしく」と頭を下げた。着ている学生服は同じ学校のものだし、おそらく年はそんなに変わらないだろうに、と思うとなんだかその緊張ぶりがおかしかった。
「僕は渚カヲル。こちらこそよろしく」
そういって手を出したらぽかんとした顔をされた。僕らの歳では握手はやっぱり変だろうか。でも碇君はしばらくして僕の手を握った。その様子をレイがちらりと見て、すぐに視線を本に戻す。
「あの、もう一人、惣流って子がいるんだけど、ちょっと遅れてるみたいなんだ」
「別に僕に言わなくたっていいと思うよ。時間になれば赤木博士が来るし、彼女に言えばいい」
「え、あ、そうだね。ごめん」
「謝る必要もないと思うけど?」
「え、うん。ごめん」
碇君はなんだかとても緊張しているようだった。背負っている空気が違う。何をそんなに緊張しているんだろうと思ってふと、僕らに対して緊張しているんだと気づく。
「何でそんなにガチガチなの? チルドレンはもっと怖いとか普通じゃないって思ってた? 外見もこうだし」
そう問うと彼は慌てて釈明する。
「え、ち、違うよ。そりゃ確かに僕は初対面の人といきなり親しくは話せないけど、そうじゃなくて、あの。
・・・・・・さっき、彼女にも挨拶したんだけど、一言で終わっちゃって、僕、嫌われてるのかなって、思って。君もそうなのかなって思って」
それが本心かは別として、確かにレイの態度は慣れないうちは戸惑うのかもしれない。
「彼女はあれが普通だから。誰に対してもそう。だから気にしないでいいよ」
「あ、そうなんだ」
そういって俯いてしまった碇君を見る。レイも自分のことが出た一瞬だけ彼を見て、また視線を落とした。

「揃っているかしら?」
赤木博士が入ってくる。慌てて立ち上がった碇君がもう一人がまだだと告げる。
「そう、珍しいわね、アスカが遅れるなんて」
そう言っているときにドアが開いて女の子が入ってきた。ハニーブロンドにブルーアイ。名前は日本風だが、肌の色もスタイルも日本人ではない。
「アスカ、遅刻よ」
「ごめん。学校を見に行ってたらギリギリになっちゃった」
言葉のほうは流暢な日本語だった。
「これで揃ったわね。じゃとりあえず。こちらが新しくパイロットになった碇シンジくんと惣流・アスカ・ラングレーさん。アスカにさん付けなんて変な感じがするわね」
赤木博士が彼らについての概要を説明する。同じ学校であること、学年も一応同じであること(ということは必然的に同じクラスだ)、住居も同じマンションで部屋は並んでいることなど。あとは当然のことだけれど、これからは訓練も実践も一緒に行うことになるとも言われた。
それから僕らの紹介になる。
「でこっちが渚カヲル君と綾波レイさん。あなたたちにも君とかさんとか馴染まないわね」
「へえ、ちゃんと名字もあるんだ」
惣流が言う。
「アスカ」
碇君が諌めるように名を呼んだけれど彼女は全く気にしていない。
「何よ。別にいいでしょ感想を言うくらい」
「わざわざ口にしなくてもいいだろう?」
二人はもうずいぶん馴染んでいるようだった。当然だ。僕らとは別に、パイロットとなるべく訓練を受けてきているはずだ。それにしてもこの娘は妙に僕らを敵対視しているようだった。
「ちゃんと戸籍もあるわよ。これからは共同で作戦を行う必要もあるのよ。ちゃんと仲良くして頂戴」
赤木博士に言われて惣流は憮然とした表情で「はぁい」と言った。
また面倒な奴がパイロットになったものだと内心でため息をついた。

それから1週間くらいは平和だった。碇君達は転入生として翌日から登校してきた。季節はずれのそれも同時に二人の転校生ということでしばらくは話題の中心だった。碇君はあまりそういう風に騒がれるのを好まないらしく、終始戸惑った感じだったが、惣流の方はなまじ美人と言える外見を自覚しているだけに、自分から中心へ行こうとしていた。僕らにはそんな二人のことは別にどうでもいいことで、話題に加わることも、二人に話し掛けることもしなかった。惣流はそれでもクラスメイトの一人として僕らには普通に声をかける。碇君はほとんど僕らに、というよりは他の子達にも自分から声をかけるようなことはなかった。

それとなく二人を観察しながら、彼らと一緒に使徒と対峙することを考える。レイとだったら何も気にしないでいいけど、そうはいかないんだろうなと思うと気が重くなる一方だった。

その予想は訓練でますます確信に変わる。碇君はまだしも、惣流は僕らとチームを組むという気がほとんどないようだった。これではいざというとき、必ずトラブルになる。そしてその評価は彼らより僕らに向かって投げつけられるだろう。そう考えてますます僕の気は重くなっていった。

彼らの初陣が来た。
使徒は2体。とはいえ連携したその動きはまるで右と左のようだった。
まずいと思った。最もチームワークが必要なタイプなのに、僕らは到底ヤツらのようなコンビネーションはできない。ヤツらの動きを見ればこっちにも連携が必要なのは一目瞭然のはずなのに、惣流は自分の功名心を優先させた。
「私が行くから、バックアップよろしくね」
そう告げると動きのシミュレーションも何もないまま突進した。
頭痛がしてくる。これでは彼女は戦力として考えられない。
「アスカ! 無茶だよ」
碇君が止めるけれど聞く耳なしといった感じでそのままソードを手に近い方の1体に走り寄った。
惣流は動きの無駄は少ないし瞬間の判断はいい。それは僕も認める。しかしスタンドプレーはこう言う時は危険でしかないのに。
結局僕はもう1体を3機で攻めることにした。せめて2体の連携を防げば勝機はある。
「とりあえず足を止めよう。レイ、後方から。碇くん、僕と左右に展開。ヤツがもう1体と連携できないように引き離せ」
指示を出しながら、じりじりと2体を引き離そうとする。片足をぶち抜き、片手を切り落とすことまで出来た時だった。
「きゃああああっ!!」
叫びと共に背後からの衝撃。
投げ飛ばされた弐号機はきれいに僕の機体にぶつかり僕は膝を突く。完全に油断していたからしばらく空白の時間を作ってしまう。
まずいと状況を確認しようとしたときにはすでに遅く、碇くんは僕に向かって動き出していて、惣流が相手をしていた1体がこっちのヤツと呼応し始めていた。
「碇くん! ダメだ、意識を逸らすな、使徒を見て」
遅かった。2体は見事な動きで碇くんの機体を両方から抑え、両腕を折った。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
最悪だった。僕は圧し掛かるようにしていた惣流の機体を払いのけ1体にパレットガンを集中させる。飛び退るように離れた2体をけん制しつつ、碇君の機体に寄る。
「碇君、大丈夫か? 二佐! パイロットは?」
「生きてるけど戦力にはならない。引き上げさせるから」
「惣流! 立てるのか。ムリなら下がれ、邪魔だ」
「立てるわよ! 邪魔ってなによ」
「文句を言う前に協力しろ」
レイは言わなくてもわかるから二人で2体を同時に牽制する。結果できる隙を惣流に攻撃させた。弱っていた方を集中的に狙わせていた。こっちは向こうの動きを牽制するのに精一杯で致命傷を与えられない。それでも向こうの動きを止めることに成功した時。疲労もあったのだと思う、僕は一瞬気を抜いた。
その瞬間を狙って襲いかかってきた腕が僕の機体を貫くと思った瞬間、プログナイフが飛んできた。それは使徒の腕をみごとに切断した。
攻撃が失敗したそのズレを狙い、僕は自分のナイフを使徒に突き刺す。そして足元に落ちたナイフでコアを抉った。
1体を殲滅すればもう一体はほとんど動けなくなった。殲滅は簡単で、それを僕は惣流にさせた。

僕を助けるのにナイフを投げてくれたのは碇君だった。引き上げポイントへ辛うじて移動した時、とっさに動かない腕を動かそうとしたらしい。そしてエヴァはそれを成し遂げた。筋繊維が断裂し、腕を動かすなんてできそうもなかった彼の機体は、その瞬間にナイフを掴んで投げる程度に回復したようだった。
今までそんなことはなかった。瞬間的な爆発的な回復。エヴァの未知数部分を改めて表出した今回の作戦は多大な反省点を抱えて、それでもなんとか撤収となった。

戻って惣流は謹慎となった。葛城さんは普段は甘い顔をしたお姉さんだが、押さえるところは押さえる。
「一人で勝手をする人はいらないのよ、アスカ。私達が欲しいのは使徒を殲滅できる人材なの。それは必ずしも優秀な人材ではないのよ」
投げ飛ばされて僕にぶつかり、結果足を引っ張った形になった惣流は、かなりプライドを傷つけられたようだった。しかし僕らは一向に気にしない。何も言わない。碇君はとても心配そうな顔をしていたけれど、彼女に対しては余計なお世話だと思った。

初戦での手痛い失敗が随分堪えたようで、惣流は不満がありながらも僕らと協調するようになった。彼女の視点は面白く、殲滅に対しての意見は聞くに値した。
彼女のプライドをそこそこ満たしてやりつつ、なんて思っていたけれど、これは彼女をリーダーにしても何とかなるかもしれない。

そうして実戦も数をこなし、問題がまったくないわけではないものの、何とか形になってきていた。
使徒によってはほとんどダメージなく殲滅することも可能になっていた。

それを組織の人達は「人数が増えたから」ではなく「惣流達が優秀だから」と口にする。
表立っては言っていないようだが、聞こえてくるものだ。
葛城さんとかはそんな風には思っていないのが救いだが、正直面白くない。
彼らにしてみれば「ちゃんとした人間」である彼らが活躍してくれた方が嬉しいのだろう。だが僕らは好きで作られたわけではないし、作ったのは自分達なのだ。

碇君や惣流を見ているとやはりムカつくこともある。だから外ではほとんど話はしなかった。無視はしないがこちらからはアプローチをしない。
惣流は何となくわかっていて、彼女からもほとんど声はかけてこない。
ただ碇くんはそういう他人の心の裏を見るのが苦手なようで、結構僕にも声をかけてくる。
部屋まで宿題を聞きに来たりもした。
「宿題は自分でしないと身に付かないよ?」
そう笑って断ったけれど。

よっぽどのん気な環境で育ったのかな? と思っていたが、実際は違った。
父親はここの指令の碇ゲンドウ。母親は同じくここの研究所員で実験中に死亡。微かに覚えている騒ぎ。何人かがこのエヴァ実用化に向けての実験で亡くなっているがその一人だった。その後父親は彼を育てず、親戚に引き取られて育ったとあった。
のん気だったんじゃなくて心を読むほど近くに他人がいなかったんだなとわかる。だからと言って僕の気持ちが変わるわけではないのだが。

夜、レイと一緒にまだベッドでまどろんでいた。今日は少し涼しくて風が気持ちよかったから窓を開けていた。レイは少し嫌がったけど、別にそんなに大きな声を出す訳じゃないからと押し切った。
心地よくて離れがたくてその体をそっと撫でながら気怠ささえも十分に堪能していると音が聞こえてくる。最初はCDか映像でも流しているのだと思った。でもつっかえたり途中で止めたりしている様子で、生だとわかる。
「碇君ね」
レイが言う。指慣らしのような単調な音階のあと曲が始まる。技術的なことはわからないけれど、感情がこもっているのはわかる。普段見る彼からはちょっと想像できないくらい叙情的な弾き方だった。
「これってチェロ?」
「たぶん」
二人でそのまま薄く聞こえるその音楽に耳を傾けていた。

翌日聞いてみるとやはり碇君だった。
「ごめん、うるさかった? いつもは気をつけてるんだけど、昨日は風が気持ちよくて月も綺麗だったから思わず窓を開けたまま練習しちゃって」
「いや。君があんな風な演奏をするとは思ってなかったからびっくりしたけど、上手なんじゃない? また窓を開けて練習してくれていいよ。聞きたいからね」
「別に隣から聞かなくたって、僕の部屋に聞きにきてくれていいのに」
「そう? じゃあレイが気に入ったみたいだから、言っておくよ」
「綾波が?」

レイは普段あまり何かに興味を示さないけれど、碇君のチェロはどうも気に入ったらしい。それから時々彼の部屋にお邪魔しては弾いてもらっているようだった。
彼の部屋でどんな風にしているのかとか、そんなことを話すレイじゃないから、二人がどんな風にチェロを弾き、聞いているのか興味はあった。でも僕自身は彼の部屋まで行って曲を聴きたいと思うほどの思い入れはなく、時々窓越しに聞こえてくるメロディで十分だった。
惣流に聞いてみると「ああ、あれ? ま、聞けるんじゃない?」と言った。彼女も碇君の演奏は気に入っているようだった。うるさいと文句をつけたりはしていないようだし。彼の演奏は女性を惹きつけるのかもしれない。

午後の授業をさぼって屋上にいた。日陰で壁に寄りかかってタバコをふかす。この学校は周囲より少し高いところにあって、見える景色は広々として気持ちがいい。風もさわさわと肌を撫でていき、このまま眠ってしまおうと目を閉じる。

「渚君」
どのくらいかして呼ばれる。目を開けると同時くらいに口からタバコを取られる。碇君だった。
「灰が落ちそうだったよ」
そういってタバコを放る。
「何?」
「え?」
「何か用があってきたんじゃないの?」
「用っていうか、渚君が教室にいないから探しに来ただけだけど。体調悪いのかなって思ったけど保健室にはいなかったし」
「さぼってたんだよ」
「うん、でも次の授業も始まっちゃうよ」
「だから、さぼってたんだってば」
「次もさぼるの」
「さぼる」

しばらくの沈黙。

「あの、さ」
言いにくそうな顔で言いにくそうに。素直だなと思う。
「あの」
「何?」
「渚君は、その、綾波と、えーっと、つ、つきあってる、の?」
「つきあってる?」
「恋人同士なのかなって」
「それは君に何か関係があるのかな?」
「え? 別に、ない、けど。ごめん、ちょっと気になっただけだから。プライベート、だよね。ごめん」
「君の言うつき合いの定義にもよるけど、セックスはしてるよ」
そういったら真っ赤になった。本当に素直だ。こんな風に感情のままを顔に出してて世の中やっていけるのかな? なんて余計な心配をする。
「なんで気になったの?」
「え? なんでって、あの、えっと」
にこりと笑ってやって答えを待つ。碇君は完全に下を向いてぼそりと小さな声で言った。
「・・・・・・こないだ、綾波がチェロを聞きに来たときに、首のところに赤い痣みたいのがあって・・・・・・」
ああ。ま、隠そうなんて思ってはいないから今までだって付いてたはずだけど、と小さく笑う。
「僕、虫にでも刺されたんだと思って、薬いる? って聞いたら、渚君に、その、つけられたんだって・・・・・・」
レイも別に隠そうとしているわけじゃない。今まで組織にも聞かれたことはないから言っていないだけで、でもおそらく知られているはずだ。健診の前にしたことだってあるんだし。でも彼には過負荷なのかもしれない。ウブそうだし。キスもきっとしたことはないんだろう。自慰くらいはさすがにしていると思うけど、してなくても有り得そうで怖い。彼だったらキスマークを指摘されたりしたらそのまま卒倒するかもね、と思い、妙にリアルに想像しておかしくなる。
「君は今まで誰かとつきあったことがあるの?」
「な、ない」
やっぱりね。クラスメイト全員に経験があるとは言わないけど、彼は本当にまっさらそうで、おもしろくなる。
「じゃあ、キスとかセックスとかも当然まだだよね」
「別にいいだろ! そっちのが普通だよ」
赤い顔でそれでも僕を見て言い放つ。ちょっとかわいいなと思ってしまったから。
「気持ちいいんだよ?」
そういって、顎を持つように押さえて唇を合わせる。びっくりした形のまま開いた口からすぐに舌を入れてぬるつく口腔内を探る。言いたいことが言葉にならないから鼻から抜けてちょっと喘いでいるように聞こえる。腕は一応僕を押し退けようとしているんだけど、ショックが強すぎるのか気持ちいいのか、ほとんど力は入っていない。僕は内心ほくそ笑んで、そのままゆっくりと横たえて押さえつけるようにキスを続けた。時々ぴくりと反応する場所があって、そこを重点的に舌先で触れていく。簡単に息継ぎはさせながら、でも言葉を話す隙は与えないでずっとその口を貪る。
腕の力が完全に抜けた頃に股間に手を伸ばす。ズボンの上からなでると暴れ出した。
「なにするっ」
「キスだよ」
「じゃなくて、手!」
「だって気持ちいいかどうか一番よくわかるところじゃないか」
実際すでに硬くなっている。形をなぞるように手を動かしたら腰を引いて逃げようとする。そんなこと許すわけがなくて肩を押さえつけてもう一度口付けた。口の中で見つけた弱いところを刺激しながら、こっそりとベルトを外してズボンをくつろげる。キスに気を取られて気付いていないみたいだからそのまま下着の中に手を入れてぎゅっと握る。びくんと大きく腰が跳ねて暴れたからもっと強く握ると大人しくなった。
口を離して自由にしてやると震える声で
「手、離して」
と言ったけれど、僕はもうヤル気満々だったから無視してそのまま手の中の彼を扱き始める。
「ヤメ、」
抵抗すれば強く握って痛みを与えて。
キスで硬くなっていたそこは、少し弄ればすぐに立ちあがった。このまま出させたら服汚しちゃうなと思ったけれど、まいいか、と手を動かし続けた。
僕の肩を押していた手はそのまま服を握り締めている。体中を硬くして快感をやり過ごそうとしているようだった。でもそんなの我慢できるわけがないことは、一応同じ男の僕にはよくわかっている。
もうそろそろ限界かなと思いながら、空いた手で緩めたズボンを足首まで引き降ろした。そのまま数回扱くと白いものを吐き出してぐったりと脱力した。 まだ息は荒いけれど休ませるわけにはいかない。さっさと前を開けて白いものを掬い取り自分自身に塗りつける。もう一度掬って膝を割り、後ろにもグリグリと塗りつけた。かなりキツイだろうとは思ったが、彼の意識がまともに戻る前にとそのまま突き立てる。
「うあ、あ、ああああっっ!」
慣らしてないし、初めてだろうしキツくてなかなか入らない。それでも強引に体重をかけて大きく揺すって無理矢理捩じ込んで行く。
「あ、い、いた、や」
揺する度に声がする。キツさは痛みを与えて少し辛かったけど全部押し込むまで僕は止めなかった。途中で切れてしまったけれど、逆に滑るようになったからそのまま気にせず全部押し込んだ。
どう考えたって初めてで、女の子とさえ未経験だろうから、もっと優しく解してからの方がよかったかななんて思ったけれど、とにかく入れてみたくってかなり無茶をした。
痛いせいもあってかきゅっと締め付けてくるから結構よかった。僕は、だけど。碇君の痛みを散らすこともしなくって思いきり一方的にやった。彼を思いやれたのは中出ししなかったことくらいで。太腿を汚した白濁には血液もまざっていた。
自分の後始末をして碇君をみると、衝撃でぼんやりしたままだった。簡単にぬぐって、ハンカチを後ろに宛がってズボンもはかせる。それでもしばらくは動けないだろうけれど。

授業を受ける気はぜんぜんなかったから、そのままぼんやりと空や景色を眺めていた。碇君はずっと動かなかった。日が傾いて空がオレンジ色に染まり始めても動かなかった。

放課後になっても屋上には誰も現れなくて、僕達はずっとぼんやりしていた。碇君の意識があることはわかっていたけれど、声はかけなかった。
完全に日が沈んでしまったのを見て僕はゆっくりと立ちあがる。
「帰ることはできるかい?」
そう聞いたら碇くんは頭ごと僕の方を見て、それからゆっくり首を振った。僕は手を貸して彼を立たせ、肩に腕を回して支える。足を踏み出す毎に顔を顰め、ゆっくりと階段を降りて行った。校門を出たところで門によりかからせ、タクシーを呼んだ。タクシーの中で碇君はぐったりとシートに身を沈め、ぼんやりと空を見ていた。
部屋につくと体をぬぐい、改めて手当てをして着替えさせてベッドに寝かせた。その間一言も口をきかなかった。ほっと息を吐き目を閉じた碇君の口に、今度は触れるだけのキスをする。
「またさせてね」
僕を凝視するその顔に自分のできる最高の笑顔で笑いかけ、僕は彼の部屋を出た。

自分の部屋に戻るとレイがいた。彼女と僕の間で隠し事はできない。
「犯罪よ、カヲル」
そう言われて首を竦めて聞き流す。
せっかく上手くいき始めたチームも、これでパアかなと思った。

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