セカンドインパクトという、とんでもない天変地異が起きた後も、基本的に人間の生活は変わらなかった。 日本では、あいも変わらずクリスマスはキリストの誕生祭じゃなくてカップルの年中行事だったし、バレンタインもそう。
僕はほぼ一人暮らしで、料理とかも結構できる方で、下手な女の子よりおいしく作れたりした。
だからというわけでもないんだろうけれど、 バレンタイン前に手作りチョコの相談なんていうのをされたことがある。
正直僕は興味がなかったし、市販の板チョコを溶かして型に入れて固めればいいじゃないか、といって顰蹙をかったけど、本当に女の子達がどうしてそんなに真剣になれるのか、僕にはよくわからなかった。
放課後、学校の調理室で数人の女の子達がチョコレートを作るのに付き合わされる。
お菓子はあんまり作ったことがなかったけど、当てされているようなのでちょっと調べてみたりはしたんだ。
こうすればいいよ、なんて言いながら、なんでこんなことになってるのかななんて考えてため息が出る。
女の子達の中に一人。
この子達は完全に僕を対象外にしてるってことだ。
気になる女の子がいるわけじゃないし、チョコレートが欲しいわけでもなかった。
クラスの男子達みたいに何個もらえるかなんて考えてるわけじゃなかったけど、この状況は正直悲しいものがあった。
なんでこんなことに付き合わなければいけないんだろう。そう思いながらも冷たくあしらったりなんてできないのは自分だから、なおさらため息が出る。
なんだかんだとチョコは出来上がって、女の子達がお礼にと余った分をくれた。
「ありがとう」
と一応笑ってもらったけど、馬鹿にされてるみたいで本当はちょっと腹も立っていた。そんな顔は少しもしなかったけどね。
家に帰ってチョコを食べながら、ぼんやりと宿題をする。
ふと気が向いて「バレンタインデー」で検索をしてみる。
そこには「本来は恋人や友達、家族などがお互いにカードや花束、お菓子などを贈る日だけれど、日本ではお菓子業者のキャンペーンで女の子がチョコレートと一緒に告白をする日になっている」とあった。
友達や家族。
僕には縁のない言葉だな。
もう一つチョコを口に入れてぼんやりと考える。
いつか僕もチョコを貰ったり、誰かにカードや花を贈るようなことがあるんだろうか。
あったらいいな、と思う。
きっとそんな日は来ないと思うけれど、もしそんな相手ができたら、僕はきっとその人を大切にする。
絶対に大切にするんだ。
そんなことを考えながら、宿題を片づけ始めた。
カヲル君と会って、僕はその時のことを思い出した。
今年のバレンタインにはカヲル君にカードと花を送ろう。
なんでって思われるかもしれないけど、カヲル君はドイツにいたんだし、たぶん問題ないよね。
まだまだずっと先のことを、僕はすごく嬉しい気持ちで考えていた。