僕が物心ついた頃からずっと哀しげな顔をしているその人の事が、とてもとても気になっていた。
誰もが幸福に笑うこの村で、彼女だけがいつもさびしい顔をしていた。
誰に聞いても、仕方がないんだよ、としか答えてくれない。
でも僕は彼女の哀しさの理由を知りたかった。
何かにつけてはよく遊びに行き、いろいろと彼女に纏わりつく僕を皆は怒ったけれど、彼女は、いいのよ、と笑って許してくれた。
そしてある日、彼女はそっと話してくれた。
遠い昔の恋の話と、いなくなった子供の話を。
彼女の腕の中で泣いた男を帰したことを後悔はしていないけれど、それでもやはり寂しかった、と彼女は言った。
そしてその父親に会いたいと行ってしまった子供も、もう生きてはいまい、生きていても二度と会えないだろうと。
彼女は僕に息子を重ねているらしく、それから時折、息子の話を聞かせてくれた。
あの子はああだったのよ、こんなことをしたのよ。
それを聞くうちに、僕はその子をまるでずっと昔から知っているような気になってしまう。
そして、会ってみたいな、と思うようになった。
外の世界へ出て行った子供。僕らが生きて行くにはとても厳しい世界だと聞く。
それでも何となく、生きているのではないかと思うのはどうしてだろう。
全くの勘だけれど彼が元気でいるような気がするのだ。
それはどこかで無事を信じている彼女の思いが移っただけなのかもしれないけれど、思い続ければいつか会えるという予感がする。
きっと、きっといつか、もう少し大きくなって僕がひとりでいられるようになったら、僕は彼を探しに行こう。
それはとても苦しい旅になるだろうけれど。
それでも僕は彼に会いたい。
そして、彼女の恋した人も見つけて、共に此処に帰るんだ。