真っ暗だった。
少しの光もない。
夜や闇ではなく、ただ何もない。
自分の姿だけははっきりと見えていた。
手も足の先も完全に。
そんな中に私はぼんやりと立っていた。
きゃらきゃらと笑う声が聞こえ、誰かが私の足にぶつかった。
よろけたものの転ぶことはなく、目を凝らしてみるが何も見えない。
やがてその笑い声は大きくなりたくさんになり、
同じようで微妙に違い、あちこちから聞こえてきた。
そして辺りを走り回るぱたぱたと軽い足音。
それは何度か私にぶつかった。
そのうちに笑い声の中に小さく別の声が混ざり始める。
遠くから少しずつそれは近づいて、泣き声だとわかった。
笑い声にかき消されそうになりながらもそれは聞こえ、
ゆっくりと大きくなる。
私は暗闇を見据える。
変わらず何も見えはしない。
笑い声が遠のき、何かがぶつかってくることがなくなり、
泣き声はすぐ傍でした。
「誰だ」
思わず、私は聞いていた。
怖かったのかもしれない。
その瞬間ぴたりと声は止み、
辺りはしんと静まり返る。
私は大きく息を吐いた。
ぎゅっと左の太股の辺りを捕まれる。
小さな手だと、見えずに知った。
「オトウサン」
「う、わあああああああっ!!!」
私は絶叫し、その手を払いのけて逃げた。
その勢いで目が覚めた。
誰もいない、一人だけの部屋。
流れ落ちる汗。
ゆっくりと見下ろしたけれど、
左足には何の痕跡もなかった。