| 白い花に抱かれて 桜の枝の上にあ っ た |
女は 背後に花を背負 っ ている |
がくりとうな垂れた首は 小さく引かれて揺れている | その髪は 酷く白い肌をした女の頭から生えている | 長い長いま っ すぐな みごと艶ややかな黒髪 |
さやさやと揺れているのは女の髪 | 視線 徐 々 に降りて行き 桜の横に至る |
その薄い色の流れの中に 黒い流れが一筋 | 踊 っ ているかのように |
ゆうらり ゆうらり | 花びらが 風に任せてあちらこちらへとながれていく | 真上から見下ろした桜の木 | 桜 | ぼんやりと淡く光 っ ているかのような 薄く色づいた綿 |
視線 ぐんと降りて真下を見る | 砂の様な 水の様な 幽かな音 | 花のゆれる音 | 葉擦れのような も っ と小さな音 |
小さく さらさらと音が聞こえる | 真 っ黒な空間 光のない闇ではなく 何もない黒 |
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| 男は思案したのかもしれない | 一息 音が止む | 無邪気なその声に 警戒の色は微塵もなく 恐怖もなか っ た |
声はまだ幼く 性別の判断がつきかねる | わかんない 気がつくとここにいたの | その声色は柔らかく 聞くものをう っ とりと捕える |
迷子なの ？ こんなところに ？ |
それでも その目 以外のすべてで笑いながら 続けた | その男は笑 っ てなどいない |
唇は左右に引かれ 笑みの形を作 っ てはいるけれど |
白い髪 白い肌 そして桜よりも濃い赤い瞳 | 桜の中に溶け込んでいるけれど 確かにそこにいる | 凝視してみると それは花ではなく 白い人間 | 驚いた気配 | どうしたんだい ？ |
花が こちらを見て口を開く | ||||||||||||||||||||||
| それより先は 何もなか っ た |
約束だよ ？ |
遮られた光が闇となり 声だけが残る | 幼い声が言い終わるより先に 燐光を放つ手が迫る | もう一回 ・ ・ ・ |
風の音で聞こえなか っ たから |
あの ごめんなさい | 音が断ち切られて言葉は届かなか っ た |
急に沸き上が っ た風が 花びらを巻き上げ二人の間に割 っ てはいる |
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ |
男はそのまま一歩下がり 口を開いた | 笑み | ここから連れてい っ てあげるから 賭けをしよう |
僕は君がとても気に入 っ た |
僕以外でここへ来たのは君が始めてだよ | あからさまに覗き込まれて 小さな息は呑み込まれる | その瞳は 血溜りのように赤く深く 光がない | 女は脇に抱えられていたけれど 男の顔で良く見えない | 屈むようにして 視線を合わせる | 流れるように立ち上がり 枝をけ っ て 男は眼前に舞い至る |
1999-11-27 直してみました。ネスケの方、いかがでしょうか？