私は人間。
私は人間じゃない。
どちらも嘘だと思うのはどうしてだろう。
怖いことはなかった。
今も、怖くない。と思う。
でもそれも嘘なんだろうか。
「お前は嘘をつかない」
それは本当がないから。
「お前は何も言わない」
それは言葉がないから。
「だから安心できる」
それは私が人形だから。
貴方を裏切らない。
貴方を傷つけない。
貴方に逆らわない。
でもきっと。
そのこと自体がたぶん。
嘘
だったのだ。
最初から貴方に嘘をついていた。
貴方に偽りを見せていた。
本当を内側に抱え込んで、
ずっと背中を見せていた。
貴方がそこに違うものを見て。
私はそれを今気づく。
たぶん最初から、選ばれるのは彼だった。
それをわかっていたのだろうけれど。
貴方を選ぶかのように見せた。
それはたぶん嘘。
人ではないのに、人のような振りをして。
これは嘘?
愛など持たないのに、慈愛に満ち溢れた振りをして。
これは嘘。
貴方の中に、彼の中に
私は偽りだけを残す。
本当かどうかなんて。
何にも、誰にも
心なんて残していない風に
簡単に身を翻して消え去る。
その姿も嘘。
ただ覚えていて。
私を。
あかいめで、うそつき。
綾波は、いつも何も言わなくて。
だから嘘をつくなんて想像できなかった。
あの時、本当になんでもなさそうに
いつもと同じように普通に
笑わずに、声のトーンも変わらずに
それで言われた言葉が嘘だったなんて
僕にわかるわけがなかった。
綾波はいつも黙っている。
時々口にする言葉はいつも真実で。
無自覚だったりはするけれど嘘だったことはなかったと思う。
もしかしたら綾波は「嘘」なんて言葉は知らないままで
嘘をついたつもりはなくて
でもそれは結果として嘘で。
それだけのことなのかもしれない。
けれど
偽りの魂。偽りの命。
それは嘘ということ?
存在の根源から偽りの私から零れる言葉は
嘘にしかならないのだろうか
あの時、彼を叩いた手は
本当にあの人を思って振り上げたものだったのに
あの人に誉めて欲しいと
ずっと思っていたはずなのに
偽りの心から生まれるものは
嘘にしかならないのだろうか
いつか彼さえも
同じように振り捨てるのならば
私は
その時だけ一瞬形を取る
幻のような
ただの嘘だ。