気がつくと、一面の白い花の中に立っていた。
空には月。
見渡せば辺りは暗く、ただ大地だけがほんのりと白かった。
どうしてこんなところにいるのだろう ―――――――――――
僕は死んだハズなのに。
視線を落とせば、思うように動く指と
あの時と寸部違わない衣服が見えた。
僕は五体満足で、自分の足で立っていた。
それでもどこかで自分はもう死んでいるのだという意識もあって
夢を見ているようだった。
何故かとても静かで、一瞬だけ、天国にでも来たのかと思う。
それからバカげた思いを笑う。
天国?
僕が?
そんなものがないことを誰よりも知っているくせに。
カサリ、と
音がした。
シンジ君が、立っていた。
目を見開き、小さく開いた口は呼吸を忘れていて
僕を見つけたからだと思ったけれど、
だけど、
シンジ君の瞳には、
小さくすべてを映すその黒い丸の中には、
僕は映っていなかった。
白い大地と、銀の月だけ。
「幽霊」という言葉が浮かんで、
そしてそれを見た瞬間に、
僕はようやく自分が何をしたのかを知った。
喉を引き攣らせて、痙攣するように全身を震わせて、
ぼろぼろと溶けるかのように涙を流して、
シンジ君は全身で、心の底から痛みに耐えられなくて、泣いていた。
絶叫じゃない。慟哭でもなかった。
地震や津波の前触れの様な、低い、低い地鳴りの様な嘆き。
それが「僕のせいなのだ」ということは
奢りでもなんでもなく、ただ事実で、
初めて僕は、シンジ君につけてしまった傷を見た。
どう、しよう・・・
どうすればいいんだ?
もう何もできないのに!!!!
膝を突き、聞いていられない声で泣きつづけるシンジ君を
ただ見ていた。
触れられない。声もかけられない。
微笑んでみせることさえ。
すべてがもう手遅れで、
シンジ君の傷がまるで本物のように、
肉を裂き鮮血が溢れ出している様が見えて、
それでも僕にできる事は何一つなかった。