出典:「サディスティック・19(ナインティーン)1巻」 48頁
立花 晶:著、白泉社 花とゆめコミックス

「枝毛を数える男」


ある日、カヲル君が唐突に言った。

「突然だけど別れよう」

それは衝撃だった。

何かカヲル君の気を損ねるようなことをしただろうか?
そりゃあ、人前でべたべたすることができなくて、ちょっと拗ねさせたこともあったけど、でも、それが原因で?

「え? なんで?」

びっくりして、他に言葉も出てこなくて僕は聞いた。
どんな答えが返ってくるのだろうか。
もし謝ってどうにかできることなら、僕は必死で頭を下げるだろうし、場合によっては、みっともない哀願さえもするかもしれない。
とにかく、理由が思いつかなかったし、突然過ぎた。
ショックで涙が滲んできたのを堪えながら、答えを待った。

「シンジ君、きみ、枝毛が全部でひゃくごじゅーきゅー本もあるだろう」
「え゛?!」

僕は自分の耳を疑った。

今、カヲル君、なんて言った…?
えだ、げ??
ひゃくごじゅーきゅーほん???

言われた言葉を理解できず、あんぐりとしてしまった僕に、カヲル君は続けた。

「ぼかーね・・・
キューティクルのびっちりそろったきれーな髪が好きなんだ・・・」

ふっと斜に構えた感じで額に指なんて当てながら言うカヲル君に、僕はしばらく言葉が出なくて、やっと、それでも呆然とばかばかしいことを口にする。

「ぼ、僕の髪の毛全部調べたの?」

その問いにカヲル君は、当然と言わんばかりに笑って

「こないだ寝たときにちょっとね」

と言った。

僕はどうしたらいいのかわからなかった。
思考はストップしたまま、僕は呆然と立ち尽くした・・・・・・・・・

僕はどうすれば・・・
どうしたらいいんだっ!!


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