世の中は、恋の話に満ちている。
テレビをつけても、漫画を開いても。そればっかりじゃないけど、それでも、恋はどこかに紛れ込んでいる。
恋の話は、人を浮つかせるんだろうか。
たまたま借りた短編集にあったジャンプ読み切りくらいの短い話。少年漫画で、だから主人公の気持ちにはなんとなく共感できなくもなかった。
なんとなく、フワフワして、なんとなく、会いたくなった。
そこで諦めた。
あーやっぱり自分は、彼が好きなんだ。
認めざるを得ない。男同士なのに。なんでなんだろう。
綾波やアスカに対してだって、ドキッとしたり、うろたえたりしたことだってあるのに、何でだか今の僕は彼に対して反応してしまう。
話しかけられて嬉しいなんて、トウジやケンスケにはそんなに思ったことはない、はず。
・・・まぁ最初の頃はちょっとあったけど、あれは友達になれそうなのが嬉しかったんだし。たぶんちょっと違う。
カヲル君とだって普通に友達だ。何気ない話をして、一緒にお昼食べたりして、時々遊びに行く。映画行ったこともあるし、ゲーセンなんかもある。普通にできてる。
でもそれでも話しかけるときにはすごく緊張するし(話し始めてしまえばそうでもないんだけど)、ふと見蕩れてる自分に気付くこともある。
目が合うと視線を逸らしてしまうけど、それはあんまり人の目を診て離せない僕にとって珍しいことじゃない。ことじゃないけど、いつものとは違うなって思ってた。
まぁ自分でもまったく自覚が無かったわけじゃないんだ。
それでも確かに特別かもしれないけど、友達としてだと思っていた。
思っていたかったなぁ。
ほのぼのとしたエンディング、二人で手を繋いで頬を染めて、お付き合いはこれから、ってのを『カヲル君とできたら』なんて思ってしまったんだから、もう諦めるしかない。
そういうことを、僕は、カヲル君と、したい、んだろう。きっと。
浮かんだ絵を思い返す。
うわ、なんだそれ、ダメ。無理。できるわけない。別に男同士だからってだけじゃなくてそんなの僕ができるわけない。
頭をぶんぶん振って、はぁ〜とため息を吐く。
そうだよな。好きだって気付いて自覚して。だからって何ができるわけでもきっとないんだ。告白なんて絶対無理だし。
まぁ嫌われてはないはず、だし、友達としては普通に付き合えてるし。今まで通り、何も変わらないっていうか変えられないままだよね。ヘタに自覚したことが裏目に出なきゃいいけど。
そんなことを思いながらもう一度その短編集を開いた。
自覚してしまうとなんだかもうそれは読めなくて、短編なのに途中で閉じてしまった。
それからも普通にしてた。話しかけるときは緊張して、隣にいるときはドキドキして。あーやっぱ好きなんだなーって思いながら、普通にしてた。
ただ恋の話は苦手になって、しまった。
アスカが聞かせる委員長の話やクラスメイトの雑談。少年漫画はまだマシだけれど、ちょっと辛い。地雷が多いのはラノベだった。まぁたくさんは読まないんだけど。
どっちにしても恋の話はやっぱり、僕の気持ちに影響する。
そうだよね、ダメだよねってなったり、告白してみてもいいんじゃないだろうかってなったり。皆どうしてるんだろうって思うけど、相手が相手だから相談もできなくて。
面倒な恋をしてしまった。
その面倒な恋は実ってしまったわけだけれど、それについては未だに夢なんじゃなかと疑わずにはいられないでいる。