「渚 カヲル」を殺せなくて、シンジはカヲルを連れて逃げた。
「外」へは逃げられなくて、ネルフの1室に閉じこもる。
ロックを壊し、カヲルの力も借りてそこを閉じていた。
ドアの外ではミサトやオペレーター達が必死に説得しようとする。
宥めすかし、時には強く責めたてて。
でもシンジは耳を塞いで聞こうとしない。

「みんな、僕を使徒として排除しようとするんだね」
「そんなことないよ!僕は、僕はカヲル君の味方だよ。
カヲル君はカヲル君だ。僕が一緒にいる。一緒にいて守るよ」
「ありがとう。そう言ってくれるのはシンジ君だけだよ」
「カヲル君。一緒にいよう?僕が、頼りないけど僕が守るから。
たとえ世界を敵に回しても」

「!!」
「世界を敵に回しても?!」

シンジのその言葉はしっかりと聞かれていた。
外の世界は騒然となる。
ゼーレはシンジを使徒と同様に「人類の敵」と見做し、カヲルと共に殲滅することを決定した。
それを受けて、ゲンドウもシンジを切り捨てる事を決める。
外ではミサトがシンジに発言の撤回を要求したが、事態がよくわかっていないシンジはそれを拒絶した。

「じゃあ、シンジ君は私たちの敵になるのね?」
「カヲル君を殺せなんて言う人は、僕の敵だよ!」
「決まりね。今この瞬間から、あなたは“敵”よ」

そうして今まではただ言葉で説得していたが、一転強行突破に切り替わった。
銃器の音がする。無理矢理こじ開けようとする、いや部屋ごとぶち壊そうとする力だった。
シンジは何がどうなったのか分からず脅える。
そんなシンジを抱き寄せて、カヲルはATフィールドを展開した。

ドガアア!!!

大音響と共に壁が崩れる。
そのむこうにはシンジ達に標準を合わせた兵で埋まっている。

「終わりよ、シンジ君」

ミサトが静かに告げる。
もうすでにシンジの精神は限界を超えていた。
こんなに簡単にみんなが敵になるなんて、信じられなかった。
少しでも優しかった人達が、今はまるで全然知らない人のように、
いや完全に「敵」として自分達を見ていた。
その状況、その表情、その視線に、シンジは耐えられなかった。

「うわあああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」

狂気に落ちようとするその絶叫に、反応するものがあった。
初号機。
目に光が宿り、拘束を引き千切って初号機は咆哮を上げる。
そしてその背はひび割れ、光がほとばしり始める。

ズズズズズッっと低い振動がネルフ全体を包む。
それはだんだん大きくなり、人々は立っている事が困難になる。
壁には亀裂が走り、通路に断層が走り崩れていく。
ミサト達を巻き込んで、ネルフは崩壊を始めていた。
そして床を破って初号機が現われ、崩れ落ちる天井からシンジ達を守る。
シンジはすでに気を失っていた。
そのまま手の中にシンジ達を大切に抱え、初号機は地上を目指した。
加速度的に崩れ去っていくジオフロント。
天井都市もその基盤から崩れ落ち、空が広がっていく。
舞い落ちる岩石をフィールドで弾き飛ばしながら、初号機はなおも上昇する。
その背からは翼のように光が放たれている。

ある程度で初号機は上昇を止め、地上を見下ろすようにしばらく滞空した。
手の中のシンジ達を抱き寄せるようにすると、初号機の胸元には使徒にも見られた光球が
ふうっと現れた。
そしてその中にシンジ達は吸い込まれていった。
自分の身の内という1番安全なところにシンジを匿った初号機は、
拘束を引き千切り、獣のように吼える。
それに合わせて翼の光は強くなり、大きくなっていた。

同じ時。
地下で、二つの生き物が動き出す。
アダムとリリス。
初号機に応じるように二つは、白い泥人形の様な姿を現した。
そして、融合を始めた。

ネルフも、ゲンドウも、レイや他のエヴァ、ゼーレが動く暇も無かった。

融合を終えた2体はその器を赤い光に代えて四散した。
その光はすべての命に触れ、その命をも光に代えた。
そして地上を走りぬけ、大地に溶けるように消える。

サードインパクト。

その後には何も残らなかった。
生き物と呼ぶべき存在は、何一つ残らなかった。
粛清された地上に、初号機がゆっくりと降り立つ。
降臨する天使のごとく。

シンジは軟らかな波音で目が覚めた。
少し冷たい風が肌を撫でていた。
ぼんやりと目を開けて空を見る。
満点の星空だった。
今まで見た事がない位の、零れ落ちるような星。

「・・・きれい・・・」

「目が覚めた?シンジ君」

呼ばれて顔を向けると、カヲルがすぐ傍にいた。
静かな月の様な笑顔でシンジを見ていた。

「カヲル君・・・?」
「もう、みんな消えちゃったよ」

カヲルの告げた言葉の意味はシンジには理解できなかった。

「なに・・・?」

分からなくて尋ねる。けれどカヲルは答えなかった。

「どこか、痛いところある?シンジ君」

優しい優しい声音に、何故かシンジは涙を零していた。

「シンジ君?」
「い、痛いよ、カヲル君・・・・・・
胸が・・ここが、痛い・・んだ・・・・・・
痛いよ・・・・・カヲル君・・・・・・」

泣き崩れるシンジを抱き締めて、カヲルはただ黙ってその背を撫でていた。
子供をあやすように、その小さな背中を撫でていた。

波音だけがいつまでも響き渡っていた。

初めはただのギャグだったはずなのに、何故こんなシリアスになってしまったんでしょう? 自分でもわかりません。
タイトルからお分かりの通り、某コーヒーのCMから思い付いたものでした。
やったもん勝ち!と思い、作り始めたのですが・・・・
なんかすっごいオヤジやミサト達、シンジに冷たいんですけど・・・
どうも私は好きなキャラを不幸にするのが好きなようです。
救くわれねえ奴。うううっ、暗い!暗いよ〜〜〜〜

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